寒い国、という印象の強いロシア。1年の気温差は30℃から75℃と激しく、北に行くほど冬の気温は下がります。
ロシアのなかでも更に寒さが厳しいシベリアでは、なんと冬の平均気温は-20℃から-35℃。内陸部になると-50℃以下まで下がります!
今回は、寒い国の中でも、更に寒い地方でたくましく生きるロシアの在来馬、”ヤクート”をご紹介します。
ロシアの在来馬”ヤクート”
最も古い馬、とも言われているヤクート。ウラル山脈よりも東側の地域:シベリアのヤクート地方の在来馬です。
毛色は茶色、グレー、白。穏やかで、好奇心が強い気質であると言われています。体高は約120cmから145cmと小柄ですが、体重は約500kg!
サラブレッドの体高が約160cmから162cm、平均体重は470kg(牡馬)・460kg(牝馬)のため、ヤクートがどれほどがっしりとした体格かを想像できるかと思います。
極寒で生き延びるヤクートの秘密
小柄で穏やか、がっしりなヤクートが特殊な品種と言われる理由。それは”寒さに強い”ということ。
他の馬が耐えられないような寒さでも、ヤクートは元気よく走り回っています。「-50℃になると調子が良い」と言われることもあります!
寒さに耐えられる理由は、ヤクートの”毛”にあります。冬になると下毛が伸び、長さは約8cmです。密集度も他の品種とは比べものにならないほど。
シベリアに耐えるために進化した体毛以外にも、冬に強い理由があります。それは”脂肪”です。
ヤクートは秋から体に脂肪をため込み始め、冬には十分に蓄えることができます。夏は35℃に達するシベリアで生きるために、ヤクートは春になると炭水化物の代謝を高め脂肪を落とします。体を調整できることで、ヤクートたちはシベリアを生き抜くことができるのです。
極寒の地で暮らす人馬
ヤクートが発見されたのは1980年代と最近のことですが、数千年前から存在していたと考えられています。800年ほどかけて、シベリアの厳しい気候に適応できる現在の姿になりました。
ヤクートは細かく分けると、以下の3種類に分類できます。
- 原種である北方の種類
- やや小柄な南方の種類
- 他の馬との配合がされた大きめの種類
北方のヤクートは、そこに住む人にとってなくてはならない馬です。乗馬としてはもちろんですが、荷役馬としても活躍します。300kgの荷物を運ぶこともできるうえ、餌なしに最大100kmも移動できるのです!
移動手段としてだけではなく、ヤクートは”クムス”という伝統的な発酵飲料を作るためには欠かせません。クムスの原料は、ヤクートたちの乳なのです。場合によっては、ヤクートたちは食用としても重宝されています。