2022年7月12日、英国競馬総括機構(British Horseracing Authority: BHA)はムチの使用制限を発表。
今後は、とても厳しい処分が下されることとなります。
イギリス・ムチ使用の新ルールとは?
- ムチの持ち方の制限
- 平地競走でムチの使用は7回まで
- 障害競走でムチの使用は8回まで
今後フォアハンドによるムチの使用は禁止され、ムチを使うときはバックハンドのみとなります。この新ルールに違反した騎手はペナルティではなく失格です。
バックハンドのみに制限した理由は、フォアハンドに比べると騎手の叩く力を制限できるため。バックハンドにすれば、騎手は大きく腕を伸ばせないため、強い力でムチを使うことができなくなります。
平地競走でのムチの使用は7回、障害競走は8回と決められました。これに追加して4回以上ムチを使用した場合、騎手は失格になります。
ムチの使用が、馬に与える影響とは?
動物愛護や動物福祉、倫理的な視点からの考えにより、ムチの制限が変更され続けているイギリス。
ワールド・ホース・ウェルフェア(World Horse Welfare)のRoly Owersは「人馬の良好な関係を考えると、ムチの使用は正当化されない」と意見を述べています。
ワールド・ホース・ウェルフェアが発表した、”ムチが馬に与える影響”に関しての調査をまとめると、以下のようになります。
- ムチの使用で馬のスピードが変わる証拠はない
- ムチの使用が馬の操作を向上させ、騎手との干渉を減らし、安全性を高めるという証拠はない
- ムチの使用は安全性の低下と関連している
- ムチが馬に痛みを与えるという決定的な証拠はないかもしれないが、痛みを与えないという証拠もなく、痛みを与える可能性がある
- ムチを使用する場合は、騎手・調教師・厩務員の全員が学習理論を理解すべきで、これがなければ虐待の可能性が高まる
【比較】日本競馬と世界競馬のムチ使用制限
日本競馬では、ムチは”1レース中、連続で10回以上の使用は制裁対象”とされています。
ただし、連続というのは”馬の2完歩の間に続けて”という意味のため、間を空ければムチはいくらでも使えることになります。
一方フランス競馬では、2005年、それまで12回だったムチの使用制限が8回に減少。年々ムチの使用制限数は減り、現在では5回になっています。
ムチに関して馬の健康を第一に考えるべきという声がある一方、騎手たちからはパフォーマンスへの影響があるという意見も挙がってきています。
これからは、”人馬が安全に楽しめる競馬のカタチ”を探すことが課題となるでしょう。